■ □ よよいの酔い■ □ 

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背を向けたと同時に身動きが取れなくなった。

「相庭…」

俺の背中からがっちりと抱き込まれてしまったので俺は前に進む事ができなくなってしまったのだ。

「冗談じゃない…やっとやっと…」

側にいる俺にも聞こえないくらいの声で彼が呟いた。


「……なに?」

「俺は…お前を大事にしたかったんだよ…」

聞き間違いか?それはもしかして友人としてって事か?そんな優しさなら俺にとっては拷問も一緒だ。

「俺は相庭と友達になりたいわけじゃない。俺はゲイなんだよ……」

俺は相庭の腕を外そうとしたけれど相庭はさらに力を込めてきた。男としては力が弱い華奢な作りをしている俺の腕では到底外せるような力の強さじゃなかった。


「俺はノンケの気まぐれなんかに付き合って傷つきたくないんだよ…」

相庭はしゃべろうとしないが…ここまできたんなら俺の気持ちを言ってしまった方がこいつも納得して離れてくれるかもしれない。

ツキンとまた胸が痛くなった。告白したら離れていってくれるなんて疑うこともなく納得できる自分が悲しい。


「俺は…俺は…お前が……好き…なんだよ…………側にいるだけで堪えられるわけ無いんだよ…だから俺から離れてくれ。友人なら、なんて馬鹿な事言ってくれるなよ。俺たちにはオール オア ナッシングしかないんだよ」


相庭の腕が少し緩んだので俺は手を添えて離そうとしたが…緩くなった様に見えても拘束力は変わらなかった。
あぁ……もう…お前が引き止めたりするから…涙が出てきたじゃないか…どうして俺に格好良くいさせてくれないんだよ。

最後のプライドくらい守らせてくれても罰は当たらないんじゃないか?パタパタと俺の涙が相庭の腕を濡らしていく。


「俺が最初の事を夢だと思ってたのは……俺がお前の事を好きだったからだ」


相庭のセリフが一瞬頭の中に入らなかった。……なに?幻聴か?

「ずっと好きで…滅多に飲み会なんかにも参加しない来生が…参加してたからあの飲み会にも無理矢理入り込んだ。…たぶん酔った来生を俺が無理矢理もぎ取って帰ったんだ」

「…………」

俺はまだ思考回路が回復できていなくて何も言い返す事ができなかった。涙も止まっちまったよ…?

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